傷病手当金をもらうための条件・もらえる期間、退職後も継続して受給する為のポイントを社会保険労務士がわかりやすく解説しました。

よくある質問

当事務所が受けてきた相談の中で、頻度の高い質問を記します。

在職中に傷病手当金手続をしていないと、退職後の傷病手当金は?

  • A.
     在職中に傷病手当金を申請していなくても、退職後の傷病手当金は受給可能です。御安心ください。傷病手当金の申請時効は、その日毎に2年間です。例えば、令和5年10月10日に申請できるのは、「令和5年10月10日から過去2年分(令和3年10月11日から令和5年10月10日までの分)」です。そして、退職後の傷病手当金を受給できるような形で退職すること(退職していること)が必要です。
     つまり、退職後に手続きを開始して、傷病手当金をもらえば良いのです。 というか、在職最後の期間は退職後でなければ、申請手続きができません。なぜなら、医師は過去の期間しか「労務不能」の証明を記入してくれない(将来の期間については、「労務不能」の証明を記入してくれません)からです。
     退職後の傷病手当金とは、「資格喪失後の継続給付(健康保険法第104条)」といいます。「本来なら、健康保険の一般被保険者資格を喪失したので、退職後の傷病手当金はもらえないところだが、一定条件をクリアーした人のみには傷病手当金を支給しますよ!!」ということです。
     では、退職後の傷病手当金をもらえるための一定条件は何かというと、以下の1から6の通りです。
  1. 退職日までに健康保険の一般被保険者期間が連続1年以上あること。※任意継続被保険者・国民健康保険加入期間・家族の被扶養者期間は含みません。ただし、保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が異なっていてもOKです。以下のようなケースは連続しているケースです。 

令和4年10月 1日から令和5年 3月31日まで 全国健康保険協会・東京支部
令和5年 4月 1日から令和5年 9月30日まで A健康保険組合

令和4年10月10日から令和4年11月30日まで B健康保険組合
令和4年12月 1日から令和5年10月 9日まで C健康保険組合

令和4年 9月 8日から令和4年10月16日 A健康保険組合
令和4年10月17日から令和5年 9月20日 全国健康保険協会・北海道支部

令和4年 9月21日から令和4年 9月30日 全国健康保険協会・兵庫支部
令和4年10月 1日から令和5年 9月25日 全国健康保険協会・群馬支部

2.退職日が労務不能であること。
3.退職日の前日までに連続3日以上の「労務不能期間」があること。
4.退職日以前4日以上前に、申請する傷病についての初診日があること。
5.傷病手当金を受給した期間が1年6ヶ月未満であること。
6.病院には毎月1回以上、通院(又は入院)していること。
 ※健康保険法には「毎月1回以上治療する必要があること」とは規定されていません。しかし、診療日があまりに少ないと、保険者(協会けんぽ・健康保険組合)側に対する印象が良くないです。また、通院(又は入院)間隔が30日以上になると、傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に記入してくれない医師も居ます。2週間に1回通院(又は入院)するのが理想的です。
7.退職日後の期間が「労務不能」であること。
 「労務不能」とは、「労働できないこと」です。具体的には、「通常労働・アルバイト・就職面接等が出来ない心身の状態であること」です。退職後にフルタイム労働・アルバイト・就職面接等を行ってしまうと、「労務可能=労働可能」と判断され、通常労働(フルタイム労働)・アルバイト・就職面接等を行った日以降の退職後期間については(正確には「健康保険一般被保険者資格喪失日以降の期間については」)、退職後の傷病手当金(「一般被保険者資格喪失後の継続給付」)が貰えなくなってしまいます。
 ただし、賃貸アパートを経営している場合のように何もしなくても自動的に毎月収入が入って来る場合は、「労務可能」とはみなされません。したがいまして、退職後に「労務不能状態」でアパート経営をしながら退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の継続給付)を貰うことは、違法とは断言できません(ケース・バイ・ケースで判断します)。
※詳しくはこちらをクリックしてください(当事務所のページです)。

在職中に傷病手当金を受給していない場合、退職後の傷病手当金は?

  • A.
     在職中に傷病手当金をもらっていなくても、退職後の傷病手当金は受給可能です。御安心ください。傷病手当金の申請時効は、その日毎に2年間です。たとえば、令和5年10月20日に申請できるのは、「令和5年10月20日から過去2年分まで(「令和3年10月21日から令和5年10月20日まで」の期間分)です。
     要するに、退職後の傷病手当金を受給できるような形で退職すれば良いのです。そして、退職後に手続きを開始して、傷病手当金をもらえば良いのです。 というか、在職最後の期間は退職後でなければ、申請手続きができません。なぜなら、医師は過去の期間しか「労務不能」の証明を記入してくれない(将来の期間については、「労務不能」の証明を記入してくれません)からです。

具体例を記します。
 退職日:令和5年9月30日
 健康保険一般被保険者期間:令和4年4月1日から令和5年9月30日まで
 療養のために休んだ期間:令和5年9月11日から令和5年9月30日まで=給与の支払は一切無し。
 給与の締日:毎月月末
病院に通院した日:令和5年9月10日(初診日)、令和5年9月24日、令和5年10月8日、令和5年10月22日。

 上記のケースでは令和5年10月1日以降(令和5年10月8日の通院日でも、令和5年10月22日の通院日でもOK)に病院に通院(又は入院)して、医師により傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に記入してもらいます。「労務不能と認めた期間:令和5年9月11日から令和5年9月30日まで」として
   ↓
被保険者記入欄を記入します。
   ↓
会社へ「被保険者記入欄(記入済み)」・「医師記入欄(記入済み)」・「事業主記入欄(未記入状態)」を郵送します。
   ↓
 会社が傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「事業主記入欄」を記入して、保険者(全国健康保険協会・健康保険組合等)へ記入済みとなった傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)一式、出勤簿コピー、賃金台帳コピーを郵送します(又は直接行って提出します)。全国健康保険協会の場合は、在職期間分の申請でも出勤簿コピー・賃金台帳コピーの提出は不要です。

 上記のケースでは令和5年10月1日以降の期間については(「一般被保険者喪失日以後の期間」については)、傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「被保険者記入欄」を自分で記入し、「医師記入欄」については医師に記入してもらい、「事業主記入欄」については未記入のまま、在職中に加入していた保険者(全国健康保険協会・健康保険組合等)へ申請者本人が傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)のみを郵送します(又は直接行って提出します)。

★上記の方法の他に在職最後の期間と退職直後の期間を同時申請する方法があります。詳しくはこちらをクリックしてください。


在職最後の期間は有給休暇でしたが、この場合退職後の傷病手当金は?

最初に図解します。


退職月が「有給休暇+公休日」のケース

  • A.
     在職最後の期間がすべて「有給休暇+公休日」だった場合でも、退職後の傷病手当金の受給要件(資格喪失後の傷病手当金の受給要件)をクリアーしていれば、退職後の傷病手当金は受給可能です。
     有給休暇期間分については「有給休暇の金額>傷病手当金の額」となるため(一般的には)、有給休暇の期間について傷病手当金を申請しても、傷病手当金はもらえません。しかし、在職最後の期間(退職日を含んだ期間)を申請しないと、退職後の傷病手当金はもらえません。
     退職後に在職最後期間分を傷病手当金申請することにより、傷病手当金の受給権(もらう権利)を獲得できるのです。有給休暇分を申請するのは、傷病手当金の受給権(もらう権利)をゲットするためです。
     よって、在職最後の期間が有給休暇の場合でも、在職最後の期間については傷病手当金を申請します。有給休暇のまま退職した場合(有給休暇のまま一般被保険者資格を喪失した場合)、在職最後期間分(一般被保険者最後の期間分)の申請は、野球にたとえると、送りバントのようなものです。次のステップに進むための手段です。

具体例を記します。
 退職日:令和5年8月31日
 健康保険一般被保険者期間:令和4年4月1日から令和5年8月31日まで
 療養のために休んだ期間:令和5年8月1日から令和5年8月31日まで=この期間をすべて「有給休暇+公休日」で消化したため、給与が全額支払われた。
 給与の締日:毎月末日
病院に通院した日:令和5年7月22日(初診日)、令和5年8月7日、令和5年8月22日

令和5年9月1日以降(令和5年9月1日でも、令和5年9月4日でも、令和5年9月5日でもOK)に通院(又は入院)して、医師により傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に記入してもらいます。「労務不能と認めた期間:令和5年8月1日から令和5年8月31日まで」として記入してもらいます。
   ↓
被保険者記入欄を記入します。
   ↓
会社へ「被保険者記入欄(記入済み)」・「医師記入欄(記入済み)」・「事業主記入欄(未記入状態)」を郵送します。
   ↓
会社が保険者(全国健康保険協会・健康保険組合等)へ傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)一式、出勤簿コピー・賃金台帳コピー(全国健康保険協会の場合は出勤簿コピー・賃金台帳コピーは不要)を郵送します(又は直接行って提出します)。


※「令和5年8月1日から令和5年8月31日まで」は、「有給休暇+公休日」なので、「令和5年8月1日から令和5年8月31日まで」の31日間については傷病手当金は不支給(支給停止)となります。しかし、「令和5年8月1日から令和5年8月31日まで:31日間」を申請することにより、「在職期間中に受給権を獲得した」という事実を証明できるので、「令和5年8月1日から令和5年8月31日まで」の31日間については申請してください。
 少なくとも「令和5年8月28日から令和5年8月31日まで」の在職ラスト4日間については、退職後(令和5年9月1日以降)に傷病手当金の申請をしないと、退職後期間(令和5年9月1日以降の期間」についての傷病手当金がもらえません。


在職中に全国健康保険協会へ加入していた場合は、「在職最後期間+退職後最初期間」を、まとめて申請することができます。
例:
退職日:令和5年7月15日
 健康保険一般被保険者期間:令和4年5月1日から令和5年7月15日まで
 療養のために休んだ在職期間:令和5年7月1日から令和5年7月15日まで=この期間をすべて「有給休暇+公休日」で消化したため、給与が全額支払われた。
 給与の締日:毎月15日
療養のために休んだ退職後期間:令和5年7月16日から令和5年8月17日まで
病院に通院した日:令和5年6月20日(初診日)、令和5年7月2日、令和5年7月15日、令和5年7月31日、令和5年8月17日
 令和5年8月18日以降の病院通院(又は入院)の際に、医師により傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に記入してもらいます。「労務不能と認めた期間:令和5年7月1日から令和5年8月17日まで:48日間」として記入してもらいます。
   ↓
被保険者記入欄を記入します。
   ↓
会社へ「被保険者記入欄(記入済み)」・「医師記入欄(記入済み)」・「事業主記入欄(未記入状態)」を郵送します。
   ↓
会社が保険者(全国健康保険協会・健康保険組合等へ)へ傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)一式(被保険者記入用・事業主記入用・療養担当者記入用)を提出します。※在職中に全国健康保険協会に加入していた場合は、出勤簿のコピー・賃金台帳のコピーは不要です。


「在職最後期間+退職後最初期間をまとめて申請」することを認めている健康保険組合も有ります。また、「在職最後期間+退職後最初期間をまとめて申請」することを認めていない健康保険組合も有りますので、健康保険組合に確認する必要が有ります。

★上記の紫囲みの方法は、在職最後の期間と退職直後の期間を同時申請する方法です。
 しかし、会社と早く縁を切りたい場合には、有給休暇分(在職最後期間分)を最初に申請します。 
 有給休暇期間分については「有給休暇の金額>傷病手当金の額」となるため(一般的には)、有給休暇の期間について傷病手当金を申請しても、傷病手当金はもらえません。しかし、在職最後の期間(最低限「退職日を含んだ在職最後の4日間)を申請しないと、退職後の傷病手当金はもらえません(傷病手当金の受給権が獲得できません)。
 よって、在職最後の期間が有給休暇の場合でも、在職最後の期間については傷病手当金を申請します。 

退職後は任意継続被保険者でなければ、傷病手当金はもらえませんか?

  • いいえ。退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の傷病手当金)は条件さえクリアーすれば、もらえます。任意継続被保険者ではなく、国民健康保険に加入しても、受給要件さえクリアーすれば、退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の傷病手当金)はもらえます。
     つまり、任意継続被保険者にならなくても(国民健康保険に加入しても)、退職後の傷病手当金は受給可能です。ただし、任意継続被保険者になると、法定の受給期限(受給開始日から1年6ヶ月)にプラスして一定期間(1年とか6ヶ月とか)傷病手当金が延長される仕組み(延長給付制度)をとっている健康保険組合もあります(健康保険組合に加入されている方は、加入されている健康保険組合に御確認ください)。

退職後の傷病手当金と公的医療保険


退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)を貰うための条件
❶退職日までに「連続1年以上の健康保険一般被保険者期間があること」。健康保険一般被保険者期間とは、在職している間に加入していた(加入している)健康保険期間です。
 会社(保険者)が異なっていても、連続して1年以上有ればOKです。したがいまして、下のケースもOKです。
令和4年7月11日から令和4年10月31日まで
株式会社東京サービス サービス業健康保険組合
令和4年11月1日から令和5年7月10日まで
静岡農林業サービス株式会社 全国健康保険協会・静岡支部
❷退職日の前日までに「連続3日以上の”労務不能期間”が有ること」。
 退職日の前日までの連続3日以上の期間については、欠勤・有給休暇・公休日・休職期間等の「出勤以外の日」であり、且つ、医師が「労務不能である」と認めたこと。
❸退職日が「労務不能」であること。
 退職日については、欠勤・有給休暇・公休日・休職期間等の「出勤以外の日」であり、且つ、医師が「労務不能である」と認めたこと。
 ∴❷と❸を一括すると、退職日以前4日以上の期間(「最低限退職日を含んだ在職最後の4日間」)が欠勤・有給休暇・公休日・休職期間等の「出勤以外の日」であり、且つ、医師が「労務不能である」と認めたこと。
❹初診日が退職日以前4日以上前にあること。
 医師は、診療日を含んだ過去の期間しか「労務不能」の証明をしてくれません。
 したがいまして、下のようになります。
令和5年8月28日が初診日 退職日が令和5年8月31日
この場合は、「令和5年8月28日から令和5年8月31日まで」の在職最後の4日間について、医師が「労務不能」の証明してくれるので、OKです。
 しかし、下のケースでは、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は貰えません。
令和5年8月29日が初診日 退職日が令和5年8月31日
この場合は、「令和3年8月29日から令和3年8月31日まで」の在職最後の3日間について、医師が「労務不能」の証明してくれます。しかし、在職期間であと1日分「労務不能」の証明が不足しています。
 このケースでは、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は貰えません。
❺傷病手当金の受給期間の合計が1年6ヶ月未満であること。
❻退職後も「労務不能状態」が継続していること。
 退職後期間中に1日でも「労務可能日」が有ると、その「労務可能日」以降の退職後期間については、傷病手当金はもらえません。
 「労務可能日」とは、医師が「労務可能と判断した日」、「アルバイト等をした日」、「就職面接を受けた日」等です。
❼診療間隔(通院間隔又は入院間隔)が30日を超えないこと。
 診療間隔が30日を超えると、医師が傷病手当金請求書(傷病手当金支給申請書)の「医師記入欄」に記入してくれないことが有ります。2週間に1回通院(又は入院)するのが理想です。

詳しくは、こちらをクリックしてください。


医師に対して言ってはいけないNGフレーズ(NGワード)は、ありますか?

  • A.
     医師の中には、「有給休暇を消化して退職すると、傷病手当金のがもらえなくなる(傷病手当金の受給権が無くなる)」と、誤った認識をされていらっしゃる方が居ます。よって、医師の前では、有給休暇という言葉は言わない方が無難です。
     有給休暇を消化したまま退職しても、傷病手当金の受給権は継続します(傷病手当金をもらう権利は無くなりません)。ただし、退職日4日以上前から退職後期間も「労務不能状態」が続いていることが条件です・


医師に診断書を記入してもらい、その後は1回も通院も入院もしていません。この場合、傷病手当金はもらえますか?

  • A.
     例えば、医師が、「今後3ヶ月間の加療を要する」とか「今後3ヶ月間の自宅療養を要する」という診断書を書いてくれて、その後3か月間通院も入院もしなかった場合、その「傷病手当金申請期間」については傷病手当金をもらうことは困難と判断します(傷病手当金はもらえない確率が高いです)。
    • 理由は、次のとおりです。
      • ❶一般的に、医師は、診療(通院又は入院)間隔が1ヶ月以上空いてしまうと、傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に記入してくれません。※「私は、この期間についてあなたを診察していないので、書けません」と医師は主張します。
         
      • ❷また、保険者(健康保険組合・全国健康保険協会等)は、傷病手当金申請期間についての通院頻度についても確認します。即ち、「この申請者は、ちゃんと通院したりちゃんと入院して診療行為を受けているが、それでも”労務不能”の状態にあったのだな」と確認をします。その為に、傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」の「通院日(又は入院日)」の項目を保険者(健康保険組合・全国健康保険協会等)は確認します。
    • 医師に診断書を書いてもらっても、保険者(健康保険組合・全国健康保険協会等)に提出するのは傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)です。診断書を提出するのではないです。

 下に全国健康健康保険協会の「療養担当者記入欄」の一部を貼り付けます。
「療養担当者記入欄」の一部

  • 「退職後期間(一般被保険者資格喪失後期間)」について1日でも傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に医師が記入してくれない日が発生すると、「医師記入欄」に医師が記入してくれない日以降の退職後期間(「医師記入欄」に医師が記入してくれない日以降の一般被保険者資格喪失後期間)については、「退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の傷病手当金)」はもらえなくなります。

医師が傷病手当金申請書に記入してくれません。どうすれば?

  • A.
     傷病手当金や障害年金を申請する際には、医師との相性は非常に重要です。相性の悪い医師とは思い切って縁を切って、他の病院に転院するという方法も有ります。
     ただし、転院する場合、注意しなければならない点が有ります。それは、医師は初診日よりも前の期間については、傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)に記入をしてくれません(転院前の医師の紹介状を提出すると自分が診た患者の初診日よりも前の期間について、記入をしてくれる医師も居ます)。
     よって、以下の2つのパターンにより転院する方法があります。


    一時的に転院前の病院と転院後の病院との治療期間を重複させる方法
    転院前病院と転院後病院の治療期間を重複させる。


    ●転院前の病院での最終診療日の翌日が転院後の病院での初診日となる方法
    転院前病院と転院後病院の治療期間を連続させる。

A社に10ヶ月在籍。B社には3ヶ月在籍。退職後の傷病手当金は?

  • A.
     A社での健康保険被保険一般者期間が10ヶ月で、B社での健康保険一般被保険者期間が3ヶ月。そして、A社を退社した翌日にB社に就職しているとします。この場合、A社の被保険者期間とB社の被保険者期間は連続していますので、この場合の健康保険一般被保険者期間は連続13ヶ月です。つまり、退職後の傷病手当金の受給要件の一つをクリアーしています。
     退職後の傷病手当金の受給要件の一つに、「退職日まで連続1年以上の健康保険一般被保険者期間が有ること」というのがあります。このパターに該当するのは、たとえば、下の様なケースです。

「令和4年10月1日から令和4年11月30日まで:全国健康保険協会・大阪支部」
「令和4年12月1日から令和5年9月30日まで:全国健康保険協会・鹿児島支部」

「令和4年10月11日から令和5年4月20日まで:A健康保険組合」
「令和5年4月21日から令和5年10月10日まで:B健康保険組合」

「令和4年10月21日から令和5年1月25日まで:全国健康保険協会・埼玉支部」
「令和5年1月26日から令和5年10月23日まで:C健康保険組合」

「令和4年10月3日から令和5年1月30日まで:D健康保険組合」
「令和5年1月31日から令和5年10月5日まで:全国健康協会・千葉支部」

下のケースでは、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)はもらえません。
「令和4年10月1日から令和5年3月31日まで:E健康保険組合」
※令和5年4月1日は、ブランク(健康保険の一般被保険者ではない。)
「令和5年4月2日から令和5年8月31日まで:全国健康保険協会・東京支部」

退職後に国民健康保険に加入した場合は、退職後の傷病手当金はもらえる?


  •  退職後に市区町村の国民健康保険に加入した場合でも、退職後の傷病手当金(健康保険法第104条に規定する「資格喪失後の継続給付」)の受給要件さえクリアーすれば、退職後の傷病手当金はもらえます。
     つまり、退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の傷病手当金)の受給要件をクリアーすれば、任意継続被保険者であろうと国民健康保険加入者であろうと、退職後の傷病手当金(健康保険法第104条に規定する「資格喪失後の継続給付」)はもらえます。
     ただし、任意継続被保険者になると、法定の受給期限(受給開始日から1年6ヶ月)にプラスして一定期間(1年とか6ヶ月とか)傷病手当金が延長される仕組み(延長給付制度)をとっている健康保険組合もありますので、御注意ください。健康保険組合に加入されている方は、加入されている健康保険組合に御確認ください。


    退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の継続給付)を貰うための条件
    ❶退職日までに「連続1年以上の健康保険一般被保険者期間があること」。健康保険一般被保険者期間とは、在職している間に加入していた(加入している)健康保険期間です。
     会社(保険者)が異なっていても、連続して1年以上有ればOKです。したがいまして、下のケースもOKです。
    令和4年4月11日から令和4年10月31日まで
    株式会社東京サービス サービス業健康保険組合
    令和4年11月1日から令和5年4月10日まで
    静岡農林業サービス株式会社 全国健康保険協会・静岡支部
    ❷退職日の前日までに「連続3日以上の”労務不能期間”が有ること」。
     退職日の前日までの連続3日以上の期間については、欠勤・有給休暇・公休日・休職期間等の「出勤以外の日」であり、且つ、医師が「労務不能である」と認めたこと。
    ❸退職日が「労務不能」であること。
     退職日については、欠勤・有給休暇・公休日・休職期間等の「出勤以外の日」であり、且つ、医師が「労務不能である」と認めたこと。
     ∴❷と❸を一括すると、退職日以前4日以上の期間(退職日を含んだ在職最後の4日間)が欠勤・有給休暇・公休日・休職期間等の「出勤以外の日」であり、且つ、医師が「労務不能である」と認めたこと。
    ❹初診日が退職日以前4日以上前にあること。
     医師は、診療日を含んだ過去の期間しか「労務不能」の証明をしてくれません。
     したがいまして、下のようになります。
    令和5年7月28日が初診日 退職日が令和5年7月31日
    この場合は、「令和5年7月28日から令和5年7月31日まで」の在職最後の4日間について、医師が「労務不能」の証明してくれるので、OKです。
     しかし、下のケースでは、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は貰えません。
    令和5年7月29日が初診日 退職日が令和5年7月31日
    この場合は、「令和5年7月29日から令和5年7月31日まで」の在職最後の3日間について、医師が「労務不能」の証明してくれます。しかし、在職期間であと1日分「労務不能」の証明が不足しています。
     このケースでは、退職後の傷病手当金(一般被保険者資格喪失後の継続給付)は貰えません。
    ❺傷病手当金受給期間の合計が1年6ヶ月未満であること。
    ❻退職後も「労務不能状態」が継続していること。
     退職後期間中に1日でも「労務可能日」が有ると、その「労務可能日」以降の退職後期間については、傷病手当金はもらえません。
     「労務可能日」とは、医師が「労務可能と判断した日」、「アルバイト等をした日」、「就職面接を受けた日」等です。
    ❼診療間隔(通院間隔又は入院間隔)が30日を超えないこと。
     診療間隔が30日を超えると、医師が傷病手当金請求書(傷病手当金支給申請書)の「医師記入欄」に記入してくれないことが有ります。

詳しくは、こちらをクリックしてください。
退職後の傷病手当金と公的医療保険

退職日までの分については、既に傷病手当金をもらいました。しかし、退職後の傷病手当金はどこに申請したらよいのでしょうか?


  •  退職日までの分の傷病手当金を既に受給していて、退職日の翌日分以降の傷病手当金を申請する場合は、退職日まで加入していた保険者(全国健康保険協会・・支部、健康保険組合等)へ申請します。
     時効は、その日毎に2年です。したがいまして、令和5年9月30日分の傷病手当金は、「令和5年10月1日から令和7年9月30日まで」に申請すればOKです(健康保険法上では)。しかし、なるべく早く申請手続きをしましょう。
     退職後期間分の申請なので、「被保険者(申請者)記入欄」を記入し、「医師記入欄」を医師に記入してもらい、「事業主記入欄」は一切記入しません。この状態の傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)を、直接、「退職日まで加入していた保険者(全国健康保険協会・・支部、健康保険組合等)」へ提出(郵送でもOK)します。退職後期間分の申請なので、会社には送らずに、「退職日まで加入していた保険者(全国健康保険協会・・支部、健康保険組合等)」へ直接提出(郵送でもOK)します。
     退職後に市区町村の国民健康保険に加入した場合、市区町村の国民健康保険課に傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)を提出(送付)しません。

退職後期間分の傷病手当金申請書申請先

A社で「うつ病」により傷病手当金をもらいながら退職し、退職後も傷病手当金を受給しました。そして、B社に就職して1ヶ月後に「うつ病」が再発しました。この場合、傷病手当金はもらえますか?


  •  傷病手当金の受給期間は、受給期間を通算(合計)して1年6ヶ月」です。
    一般被保険者として最後に加入していた期間が連続1年未満の場合は、退職後の傷病手当金はもらえません。

医師に診断書を記入してもらい、在職中に会社に提出しなければ傷病手当金はもらえませんか?

  • A
     「医師に診断書を記入してもらうこと」が傷病手当金を受給するための条件ではありません。つまり、傷病手当金を受給するのに診断書は不要です。
     しかし、傷病手当金支給申請書(請求書)の「療養担当者記入欄(医師記入欄)」には、医師により記入してもらう必要が有ります。医師は初診日以降の期間しか傷病手当金支給申請書(請求書)の「労務不能と認めた期間」に記入してくれません。また、過去の期間しか傷病手当金支給申請書(請求書)の「労務不能と認めた期間」に記入してくれません。
    • 例えば、「令和5年10月1日から令和5年10月31日まで会社を欠勤し、「令和5年10月1日から令和5年10月31日まで」は無給だったとします。初診日が令和5年10月15日で、会社の給与締日が月末とします。そして、令和5年10月31日に通院したとします。
    • この場合、医師が傷病手当金支給申請書(請求書)の「療養担当者記入欄(医師記入欄)」の「労務不能と認めた期間」に記入してくれるのは、「令和5年10月15日から令和5年10月31日まで」です。「令和5年10月1日から令和5年10月14日まで」の14日間については、初診日よりも前の期間なので、医師は判断ができません。よって、初診日よりも前の期間である「令和5年10月1日から令和5年10月14日まで」の14日間については、医師は「労務不能」と認めてくれないので、「令和5年10月1日から令和3年10月14日まで」の14日間については傷病手当金はもらえません。

傷病手当金は、休職をした後でなければ申請できませんか?

  • A
     「休職すること」が傷病手当金を受給するための条件ではありません。つまり、休職しなくても傷病手当金は受給できます。
     そもそも小企業・零細企業では「休職」という規定を作成していないことが、よく有ります。それは、「休職」が就業規則の絶対的記載事項ではないからです。つまり、「休職」は必ず定めなければならないルールではありません。会社が休職という制度を作っていなくても、労働基準法に違反するわけではありません。
  • したがいまして、「休職せずに、会社を欠勤し始めてから1ヶ月後に退職」というケースも、よく有ります。
  • 先ほどのご質問と一括すると、「医師から診断書を書いてもらっていない」且つ「休職していない(欠勤は、している)」状況でも、健康保険法第104条の規定をクリアーすれば、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は受給できます。

職場復帰を目的にしていないと、傷病手当金は受給できませんか?

  • A
     「会社を一時的に欠勤するが、職場復帰することが目的」というのは傷病手当金の受給要件ではありません。つまり、職場復帰を目的にしていなくても、傷病手当金は受給できます。職場復帰することが目的なのは、雇用保険の育児休業給付金です。
  • 「病状が重く、このまま会社に在職しても会社を欠勤するだけななので、退職して療養に専念したい」というケースも有ります(このような従業員さんもいらっしゃいます)。
     このケースの場合も、健康保険法第104条の規定をクリアーすれば、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は受給できます。

退職届を提出しないと、傷病手当金はもらえませんか?

退職届を提出しなくても、傷病手当金は受給可能です。

  • 傷病手当金は退職理由に関係無く、傷病手当金を受給するための条件をクリアーしていれば、もらえます。
  • 退職届は、「自己都合退職」の場合に、「自分の意思で、自分が考えた結果、退職します」という意思表示です。したがいまして、たとえ病気・怪我等による退職であっても、「自己都合退職」となります。
    • ただし、病気・怪我等の理由で退職する場合は、失業手当(正式には「基本手当」と言います)の手続きをする際に、ハローワークでは「正当な理由による自己都合退職」として扱ってくれます(「病気・怪我等により退職せざるを得なかった」という証拠を提出することが必要ですが)。「病気・怪我等により退職せざるを得なかった」という証拠の例として、「傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)のコピー」、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳等が有ります。
  • したがいまして、「解雇」・「退職勧奨」の場合は、自己都合退職ではなく、「会社都合退職」となります。会社の都合により(会社の意思で)退職するので、解雇・退職勧奨等の「会社都合退職」の場合は、退職届は不要です。

会社から解雇予告手当をもらい解雇を言い渡されました。傷病手当金はもらえませんか?

傷病手当金を受給するのに、退職理由は関係有りません。

  • 解雇でも退職勧奨でも自己都合退職でも、傷病手当金を受給するための条件をクリアーしていれば、もらえます。
  • ただし、退職後療養に専念し、病気が治癒又は軽快して就職活動が可能な状態となり、ハローワークで基本手当(失業手当)を受給する手続きをする際に、会社都合退職(解雇・退職勧奨等)と自己都合退職とでは、基本手当の給付について扱いが異なります。
    • 会社都合退職(解雇・退職勧奨等)の場合は、給付制限(「基本手当の手続きをしてから原則2ヶ月は基本手当がもらえない」というペナルティー)が無く、また、自己都合退職者よりも基本手当の給付日数が多くなります。
      基本手当(失業手当)の給付日数は、こちらをクリックして下さい。
    • 自己都合退職の場合は、給付制限(「基本手当の手続きをしてから原則2ヶ月は基本手当がもらえない」というペナルティー)が付きます。また、会社都合退職者よりも基本手当の給付日数が少なくなります。
       ただし、ハローワークにより「特定理由離職者」として認定してもらえた場合は、給付制限(「基本手当の手続きをしてから原則2ヶ月は基本手当がもらえない」というペナルティー)が無くなり、基本手当が会社都合退職者と同じ給付日数となるケースが有ります。
       詳しくは、下の「基本手当の特例」をクリックしてください。
       基本手当の特例

解雇予告手当を貰いましたが、傷病手当金は減額されますか?

解雇予告手当をもらっても、傷病手当金は減額されません。

  • 解雇予告手当(労働基準法第20条)として、平均賃金(労働基準法第12条)30日分を会社が私に支払って即時解雇となりました。この場合、「解雇予告手当」は傷病手当金と調整されますか?
    • 解雇予告手当(労働基準法第20条)は「労務の対償」とはなりませんので、解雇予告手当が支払われても傷病手当金は減額されません。


自己都合退職で会社を退職しました。傷病手当金はもらえますか?

傷病手当金をもらうのに、退職理由は全く関係有りません。

  • 自己都合退職が影響するのは、基本手当(失業手当)です。完全なる自己都合退職の場合は、基本手当(失業手当)の手続きをしてから2ヶ月は給付制限という「基本手当(失業手当)を支払ってくれない期間」が発生してしまいます。
     これは、「あなたは、自分の都合で会社を辞めたのだから、ペナルティーとして最初の2ヶ月間は基本手当(失業手当)は出ませんよ!」という制度です。基本手当(失業手当)が2ヶ月分減らされるのではなく、一時(2ヶ月間)お預け状態ということです。
  • しかし、自己都合退職でも「病気・怪我・育児・親族の介護等により止むを得ず退職した場合」は、給付制限2ヶ月にはなりません。ただし、これには特定理由離職者として認定してもらうことが条件となります。
     特定理由離職者とは、「本当は退職したくなかったのだけれど、病気・怪我・育児・親族の介護等のために、退職せざるを得なかった」ことがハローワークに認定してもらえた場合に認められる受給資格です。通常の自己都合退職者と会社都合退職者(解雇・退職勧奨等)との中間的な受給資格です。
  • また、自己都合退職の場合でも、傷病手当金が減額されることは有りません。

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