「うつ病が労災かも?」の場合
「うつ病」が労災認定される可能性があるケース
厳しいノルマ・長時間労働・パワハラ等により「うつ病」になった場合
とりあえず、傷病手当金を受給しながら労災を申請します。
- 精神疾患による労災認定は非常に時間がかかります。6ヶ月~1年位かかります。
- 「うつ病」で会社を休職している間はとりあえず、傷病手当金を請求しておかないと、生活ができないケースも少なくありません。
- 傷病手当金をもらいながら、労災の申請をします。そして、労災が認定されたなら、労災に切り替えます。
- その際、以下のものを保険者である「健康保険協会」又は「健康保険組合に返還しなければなりません。
①「今までもらってきた傷病手当金」
②「今までかかった総医療費(又は保険給付分の医療費) - 一時的にまとまった額のお金が必要となります。
- しかし、労災認定がおりるまでもらってきた傷病手当金や医療費の返還が完了する前でも、労災の「休業(補償)給付」・「療養(補償)給付」を開始してもらうことができます。
「健康保険により給付された額の返還」の取扱を行うため労働者に多大な経済的負担が生じ、実情に添わない場合には、当該保険者と連絡の上、健康保険の保険者に対する給付額返還が完了する前であっても給付し、・・・・・
(昭和29.8.23 基発第116号)
- しかし、労災認定がおりるまでもらってきた傷病手当金や医療費の返還が完了する前でも、労災の「休業(補償)給付」・「療養(補償)給付」を開始してもらうことができます。
- 上記の制度(傷病手当金をもらいながら労災申請し、労災が認められたら傷病手当金と医療費を返還する制度)を認めていない健康保険組合もありますので、注意が必要です。
- その際、以下のものを保険者である「健康保険協会」又は「健康保険組合に返還しなければなりません。
- 図解
- しかし、パワハラ・セクハラで労災を申請するというのは、会社への宣戦布告ですから、それなりの覚悟が必要です。なぜなら、通常は傷病手当金の申請も労災の申請も会社を通してしますので。
- 傷病手当金申請も労災申請も本来は従業員の権利ですので、会社が手続きをしたがらない場合にはそれなりの策を講じて従業員本人が手続きをすることも可能です。
ご相談はこちらをクリック
ICレコーダー等により上司との会話を録音し、証拠を確保しましょう!!
※メモも証拠となります。メモをしたなら、友人・知人・家族等の方へその内容をメールしましょう⇒電子メールには日付が残るので、メモの日付が確定できます。
労災の方が健康保険よりも手厚い(内容が良い)です。
「ダメもと」で傷病手当金と同時に労災も申請するのは可能です。
- 「精神疾患」による労災認定率は、約30%です。
- せっかく「うつ病」による労災を申請しても、労災と認定される確立は高くはないです。しかし、最初からあきらめるよりは申請してダメになる方がマシです。
労災による給付は退職後も続きます。
- 労災の場合には、退職した後でも条件を満たしている限り、給付は続きます。
パワハラ・セクハラを受けた場合
パワハラ・セクハラを受けて心身の調子が悪くなった場合
- 上司や同僚から「嫌がらせ・いじめ・冷遇」等のパワハラ・セクハラを受けた結果、心身ともに不調になり、その結果退職をせざるを得なくなるケースが非常に増えています。
対策①ICレコーダー等により会話を録音しましょう。=証拠の確保
- パワハラやセクハラを受けている場合には証拠を残しましょう。できれば物証がベストです。特にビデオが良いのですが、現実には非常に厳しいので、上司や同僚との会話を録音したものでもOKです。
- 自分で書いたメモも証拠能力があります。メモを書いたら、友人・知人・家族等にその内容をメールで送りましょう。電子メールには送信した日付・時刻が残されるので、「何月何日にどういう事件が起きたかについて記録されます」=日付が大切です。
- 後に労災の申請をするときに証拠として役に立ちます。
- また、民法709条に基づく損害賠償請求(不法行為に対する損害賠償請求)又は民法415条に基づく損害賠償請求(事業主の安全配慮義務違反=債務不履行)の訴訟をおこす場合の証拠ともなります。
対策②:傷病手当金の申請をする。=どうしても出勤したくない場合
- 医師に診察をしてもらい、医師が「就労不能」と判断したら、「○○月××日~○○月△△日までは就労不能(又は就労困難)と判断されるために、療養を要する。」という内容の「診断書」を書いてもらいましょう。そして、その診断書を会社の上司に提出して医師が指示した期間については療養に専念しましょう。
- 医師に指示された期間について会社を休む場合には、「欠勤無給」とするか「有給休暇」とするか、又は「休職」扱いとするかについては、就業規則を確認するなり、雇用契約書を確認するなりして決めましょう。
- 「休職」の場合には、休職期間については「有給」にするか、「無給」にするか、又は「一部給与を支給する」のかについて、就業規則、雇用契約書を確認するか、又は上司と協議しましょう(話しづらいですが)。
- 傷病手当金は1日毎に権利が発生します。従いまして、傷病手当金1日分の額が給与1日分の額よりも多い場合に傷病手当金がもらえます。
- 給与が全く支給されない場合には、傷病手当金は原則全額もらえます。
- 医師から「労務不能」とか「就労不能」とかの判断を受けた場合には、無理をせずに休養をとりましょう。特に「うつ病」は長引いたり、仮に治癒しても再発するケースが多いので、症状が重くならないうちに休養をとりましょう。
対策③労災の申請をする。
- 上司や同僚との会話を録音したICレコーダーやビデオを証拠として労働基準監督署に労災の申請をします。精神疾患による労災申請については、一般的には結果が出るのに6ヶ月以上かかります。
- しかも、精神疾患による労災認定率は約30パーセントです。
- そのために、とりあえず、傷病手当金を申請するのです。その後に労災を申請すればよいのです。傷病手当金をもらいながら労災を申請するというのは、本来の趣旨からすると矛盾しているのですが、労災申請の結果が出るのに時間がかかるために実務上用いられている方法です。
労災の申請は会社を通さずに従業員本人が申請することも可能です。
対策④休職する。
- 精神疾患、特に「うつ病」の場合には長引くケースが多いです。そのために症状が回復せずに長引きそうな場合には、「休職」を申し出ましょう。
対策⑤-a:休職期間中に退職をせまられたら。=退職勧奨
- 会社から退職をせまられても、退職に応じる義務はありません。しばらくは傷病手当金をもらいながら休職を続けましょう。
- 退職勧奨は会社から従業員さんへのはたらきかけです。退職勧奨を無視・拒否しても全く問題ありません。
- 詳しくはこちらをクリック
対策⑤-b:休職期間中に「退職しないと解雇する」と言われた場合
- 会社が従業員を解雇するにはそれなりの条件をクリアーしないと解雇はできません。会社は従業員を簡単には解雇できません。
対策⑤-C:就業規則に「休職期間が満了しても休職事由が消滅しない場合は、休職期間の満了をもって退職とする」という規定がある場合
- この規定がある場合は、そのまま在職することは厳しくなってきます。
- しかし、会社が「休職期間が満了したから退職だよ!」と主張しても休職の原因となった傷病が業務上によるものである場合には、労働基準法第19条の「解雇制限」が類推適用される余地があります。
- 要するに、『いくら休職期間満了による退職とはいっても、仕事が原因で休職していたのだから、「業務が原因で傷病休職している期間+その後の30日間は解雇をしてはいけません!」という労働基準法第19条第1項の規定を、そのまま使いますよ』ということです。
- そのためにもパワハラ・セクハラ・いじめ等の証拠は残しておきましょう。
- 要するに、『いくら休職期間満了による退職とはいっても、仕事が原因で休職していたのだから、「業務が原因で傷病休職している期間+その後の30日間は解雇をしてはいけません!」という労働基準法第19条第1項の規定を、そのまま使いますよ』ということです。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
(労働契約法:第16条)
- 病気や怪我で解雇されるという場合にはその解雇の判断が難しくなります。上記・労働契約法:第16条の「客観的に合理的な理由」があるかどうかです。つまり、病気や怪我による解雇はケース・バイ・ケースで判断しなければなりません。
- 「解雇事由」(どういう場合に解雇になるか?)については、就業規則の絶対的記載事項ですから、まず最初に就業規則がその判断の根拠となります。
- ※就業規則に規定されていない解雇事由では会社は従業員を解雇できないかというと、そうではなく、解雇権の濫用に当たらなければ解雇はできます。
- ※逆に、「就業規則規定の普通解雇事由に該当しても、解雇が不合理で、社会通念上是認できない場合には、解雇権の濫用になる」という判例もあります(高知放送事件)。
よって、解雇が有効か?無効か?は(正しい解雇か?行き過ぎた解雇か?)は、解雇権を濫用していないかどうか、すなわち①解雇事由が客観的で合理的か? ②社会通念上相当かどうかがポイントとなります。
- いずれにしましても、解雇というのは会社の都合だけで勝手にできるものではありません。
- ご相談はこちらをクリック
対策⑥労災と認定されたら
- 業務上負傷した場合にはその療養に要するための期間とその後の30日間は、会社は従業員を解雇はできません(労働基準法19条第1項)。
- 今までもらってきた傷病手当金に相当する額と総医療費(又は総医療費の70パーセント)を健康保険協会や健康保険組合に返還します。一時的に、ややまとまったお金が必要となります。
- しかし、労災認定がおりるまでもらってきた傷病手当金や医療費の返還が完了する前でも労災の「休業(補償)給付」・「療養(補償)給付」を開始してもらうことができます。
「健康保険により給付された額の返還」の取扱を行うため労働者に多大な経済的負担が生じ、実情に添わない場合には、当該保険者と連絡の上、健康保険の保険者に対する給付額返還が完了する前であっても給付し、・・・・・
(昭和29.8.23 基発第116号) - 上記の制度(傷病手当金をもらいながら労災申請し、労災が認められたら傷病手当金と医療費を返還する制度)を認めていない健康保険組合もありますので、注意が必要です。
- しかし、労災認定がおりるまでもらってきた傷病手当金や医療費の返還が完了する前でも労災の「休業(補償)給付」・「療養(補償)給付」を開始してもらうことができます。
- 今までもらってきた傷病手当金に相当する額と総医療費(又は総医療費の70パーセント)を健康保険協会や健康保険組合に返還します。一時的に、ややまとまったお金が必要となります。