「うつ病」により退職勧奨を受けた場合
退職勧奨を受けた場合
退職する義務はありません。
- 退職勧奨は会社から従業員さんへのはたらきかけです。退職勧奨を無視・拒否しても全く問題ありません。
- 退職勧奨は、辞めて欲しい従業員さんに対して企業がよく使う手段です。
「うつ病」で自分自身も会社を辞めたい場合
- 「うつ病」にかかり、その後2・3ヶ月間休職をした後に職場復帰しても、何となく会社での居心地が悪くなるケースが往々にしてあります。
- ①「うつ病をしっかり治してから再就職をしたい」場合や、②会社側から退職金を割増するようなことを言われた場合には、退職勧奨を受け入れるのも一つの手です。この場合には、退職後にハローワークで基本手当の手続きをする際に、「特定受給資格者」として扱われ、2ヶ月間の給付制限も無く、基本手当の所定給付日数も増えます。
- ただ、会社に常設的に「早期退職者優遇制度」があり、従業員さんの方から自発的に退職を申し出た場合は、特定受給資格者とはならずに、自己都合退職扱いとなり、給付制限が適用され、基本手当ての所定給付日数も一般の離職者と同じになります。「早期退職者優遇制度」があるのは一般的には大企業です。
退職勧奨を受け入れる場合の対策
退職勧奨を受け入れる場合の対策=「合意書」・「同意書」を作成する。
- 会社側からの退職勧奨を受け入れる場合には、退職理由を正しく記載した「合意書」・「同意書」又は「確認書」を作成しておきましょう。この合意書・同意書・確認書等には、以下の様に記載しましょう。
退職合意書
1 ○○○は●●●による退職勧奨を受け入れ、平成・年・月・日をもって退職する。
2 退職理由については、「会社都合」扱いとする。
- 上記の様な内容の合意書であれば、ハローワークで手続きする際に「特定受給資格者」扱いとなり、「給付制限無し」+「基本手当の給付日数増加のケース有り」という扱いになります。
退職勧奨の場合には「退職願」・「退職届」の提出は不要
★ポイント
「退職願」・「退職届」を提出すると、原則は「自己都合退職」となります。自己都合退職の場合には、失業手当をもらう際に①2ヶ月間の給付制限がつく、②解雇(懲戒解雇を除く)・退職勧奨等の会社都合退職と比較して基本手当の給付日数が少なくなる、等のデメリットが発生します。
会社都合による退職(解雇・退職勧奨等)の場合には「退職願」も「退職届」も不要です。
- 会社から強くせまられて仕方なく提出した場合の「退職願」は?
- この場合には、取消ができます。
- 民法96条には、「強迫を受けて行った意思表示は取り消しができる」と規定されています。つまり、会社と従業員との間で退職について合意した場合でも、その合意が会社から半ば強制的にほとんど無理やり合意にもっていかれたという場合には、「退職についての合意」は取り消すことができます。
「強迫」とは「他人に対し暴行・監禁あるいは害を加える旨の告知をしたり、さらにこれらの行為(暴行・監禁あるいは害を加える旨の告知)の組合せによって人に恐怖を抱かせ、その行為を妨げること」です。- 強迫による合意退職の具体例としては、会社に出勤する度に毎日毎日、「君には退職しかないんだよ!!退職してくれるよね!!」等、何度も何度も従業員に対して退職を迫る行為が該当すると思われます。
- 「自己都合退職」か「会社都合退職」かは、離職票を見てハローワーク担当者が判断します。
- 離職票の「3 事業主の働きかけによるもの」欄にチェックが入っていれば特定受給資格者となり(「重責解雇」を除く)、基本手当が自己都合退職の場合と比較して有利になります。
- 離職票の「4 労働者の判断によるもの」の欄の「(2)労働者の個人的な事情による離職」にチェックが入っていると、「自己都合退職」扱いとなってしまい、「給付制限3ヶ月」+「基本手当は一般被保険者扱い」ということになってしまいます。
- しかし、退職前に会社から圧力を受けて仕方なく「自己都合退職」として離職した場合には、「会社都合退職」として扱ってくれる可能性があります。そのためには退職直前の会社との交渉・やり取りを記録した「書類」・「メール」・「電話録音」・「ICレコーダーによる録音」等の客観的証拠が必要となります。
傷病手当金受給⇒退職⇒ハロワークでの手続き:図解
「自己都合退職」でも給付制限無しで基本手当(失業手当)がもらえるケース
- 退職時に心身の障害や疾病状態で医師から「就労不能」(ドクターストップ)という診断がされていれば、仮に自己都合退職であっても、「給付制限(失業手当の手続きをしてから2ヶ月間は失業手当がもらえないというペナルティー)」無しで、基本手当(失業手当)を受けることができます。
- また、雇用保険の被保険者月数が「退職日以前12ヶ月以内に6ヶ月以上11ヶ月」であれば、会社都合退職者と同じ日数分の基本手当(失業手当)がもらえます。⇒「自己都合退職者」と比較して、基本手当(失業手当)の給付日数が増えます。
「自己都合退職」でも「給付制限無し(失業手当の手続きをしてから2ヶ月間はヶ月間は失業手当がもらえないというペナルティー無し)で、基本手当(失業手当)を受けることができるケース
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
上記の(1)・(2)・(3)の文はハローワークホームページから引用しています。
- 「退職願」と退職届の違い
- 「退職願」は、後日、撤回することができます。文字通り、「退職のお願い」ですので。
- それに対し、「退職届」は一回提出したら、撤回できません。「退職します!」という明確な意思表示ですから。
- 「退職願」でも「退職届」でも、「一身上の都合により退職します。」はNGです。
- 病気による退職届の例は下のボタンをクリックしてください。
退職勧奨に合意した場合のメリット
基本手当の所定給付日数が増えます。
- 退職勧奨を受け入れて退職した場合には、基本手当(失業手当)をもらえる日数(所定給付日数)が増えます。
パワハラ・セクハラを受け体調をくずした場合。
傷病手当金をもらいながら、労災の申請をします。詳しくはこちらをクリック
- パワハラ・セクハラを受けたために、精神的にダメージを受け、体調をくずし、結果、仕事が手につかなくなるケースが非常に増えています。
- このような場合には、とりあえず傷病手当金を申請して傷病手当金をもらいながら、労災を申請することをおすすめします。健康保険と労災保険に同時申請するのは理論的には矛盾しますが、労災認定がおりるまでには時間がかかるので、実務的にはこの方法をとります。詳しくはこちらをクリック
ICレコーダー等により上司との会話を録音し、証拠を確保しましょう!!
- しかし、パワハラ・セクハラで労災を申請するというのは、会社への宣戦布告ですから、それなりの覚悟が必要です。
- パワハラ・セクハラによる労災申請を会社が自ら手続きをするとは思えません。しかし、その場合には、それなりの策を講じて従業員本人が手続きをすることが可能です。
- ご相談はこちらをクリック
退職勧奨をうけた場合の基本手当日数
基本手当がもらえるための条件が緩くなります。
- 退職勧奨を受けた人が基本手当をもらうための条件
退職日(会社在籍最後の日)より遡って1年間に、退職日から遡って1ヶ月ごとに区切った期間に「賃金支払基礎日数:11日以上の日」が通算して6ヶ月以上」あれば、基本手当がもらえます。
- 賃金支払基礎日数とは、以下のケースを指します。
- 実際に労働した日・年次有給休暇・休業手当をもらった日
「有給休暇」や「休業手当をもらった日」は、実際には働いていませんが、雇用保険上は「労働した」とみなすわけです。
- 実際に労働した日・年次有給休暇・休業手当をもらった日
退職勧奨を受けた人が「基本手当」をもらえる例:
退職日~退職日前1ヶ月 | 2日間労働 | × | 給料2万円 |
---|---|---|---|
退職前2ヶ月~退職日前1ヶ月 | 8日間労働 | × | 給料8万円 |
退職前3ヶ月~退職日前2ヶ月 | 9日間労働 | × | 給料9万円 |
退職前4ヶ月~退職日前3ヶ月 | 11日間労働 | OK | 給料12万円 |
退職前5ヶ月~退職日前4ヶ月 | 10日間労働 | × | 給料10万円 |
退職前6ヶ月~退職日前5ヶ月 | 15日間労働 | OK | 給料18万円 |
退職前7ヶ月~退職日前6ヶ月 | 18日間労働 | OK | 給料24万円 |
退職前8ヶ月~退職日前7ヶ月 | 20日間労働 | OK | 給料30万円 |
退職前9ヶ月~退職日前8ヶ月 | 21日間労働 | OK | 給料30万円 |
退職前10ヶ月~退職日前9ヶ月 | 10日間労働 | × | 給料10万円 |
退職前11ヶ月~退職日前10ヶ月 | 11日間労働 | OK | 給料12万円 |
退職前12ヶ月~退職日前11ヶ月 | 9日間労働 | × | 給料9万円 |
★退職日以前1年間に「11日以上働いた月」が6ヶ月あるので基本手当はもらえます。
★例を挙げると、給与の締め日が毎月20日の場合には、「9月21日~10月20日」の給与期間については、「退職前4ヶ月~退職日前3ヶ月」の期間が該当し、「11日間労働」・「給与12万円」となります。
★上の表の青字で書いた行の給料をすべて合算して180で割った額が賃金日額となります。
- 12万円+18万円+24万円+30万円+30万円+12万円÷180
=7,000円⇒賃金日額 - この賃金日額をもとに基本手当日額(失業手当1日分の額)が決定されます。
- 退職日に60歳未満の人 ⇒ 賃金日額×0.5~0.8
- 退職日に60歳以上65歳未満の人 ⇒ 賃金日額×0.45~0.8
- 基本手当のおおよその額 ⇒ 「給料1日分×0.6」
- 正確な計算式を知りたい方はこちらをクリックしてください。厚生労働省のサイトです。※計算式はかなり面倒です。
- 基本手当(失業手当)1日分の上限額(令和5年8月1日以降)
30歳未満 Max.6,945円 30歳以上45歳未満 Max.7,715円 45歳以上60歳未満 Max.8,490円 60歳以上65歳未満 Max.7,294円